山芋中のジオスゲニン
ジオスゲニンは、山芋に存在する天然ステロイドとして知られていますが、山芋自身にジオスゲニンは含まれておりません。山芋中のジオスゲニンは、ジオスチンなどの配糖体として存在します。我々の研究では、数種類のジオスゲニン配糖体が山薬(漢方用山芋)から発見されています。
山芋中やその抽出物中のジオスゲニンを分析する場合、通常、酸処理を行いジオスゲニン配糖体からジオスゲニンに変換して含有量測定が行われます。でも、実は、弊社の原料のように酸処理を行っている原料を除き、山芋やその抽出物には、ジオスゲニンが含まれている訳ではないです。
DHEAとジオスゲニンの違い
ジオスゲニンは、性ホルモンの中間体であるDHEAの前駆体とされており、摂取することにより体内でDHEA量が増えることが報告されています。そのDHEA量増加は、動物(マウス)とヒトで確認されております。
しかし、ジオスゲニンを摂取しても、DHEAを直接摂取するほど、血中DHEA量は上がりません。また、ジオスゲニンのヒト試験では、閉経女性と、性ホルモンが減少している被験者で実施されており、性ホルモンが不足していない被験者では、顕著に増加を示さない可能性もあります。
ジオスゲニンの摂取は、過度に性ホルモンを上昇させず安全な反面、性ホルモン上昇に関しては、DHEAより効果は低いと考えられます。一方、ジオスゲニンには、近年、DHEAにはない効果も発見され始めています。
引用文献
村木悦子, 千葉大成: 浦上財団研究報告書 15:75-90
Wu WH, Liu LY, Chung CJ, Jou HJ, Wang TA. Estrogenic effect of yam ingestion in healthy postmenopausal women. J Am Coll Nutr. 2005;24(4):235-43.
ジオスゲニンの問題点:吸収性・生物学的利用能
ジオスゲニンの摂取には、1つ問題が存在します。その吸収性や生物学的利用能の低さです。粉体のまま摂取しても、あまり吸収しないことが知られています。一方、油脂に乳化することで吸収性が上がることが報告されています。また、ジオスゲニンに包接加工を行うと(γシクロデキストリンで)4~5倍に吸収性が上がることなどが報告されています。
過去、漢方の世界では、各素材の吸収性を高める組み合わせが研究されてきました。その最もポピュラーなケースがジオスゲニンのようなサポニンとフラボノイド(ポリフェノール)の組み合わせであり、それぞれの吸収が高まることを加味して合わせて利用されてきました。それが数多くの漢方薬に山薬(山芋)が利用されている理由だったりもするのです。
ジオスゲニンを健康食品やサプリメントに利用する場合、この吸収特性を加味して利用する必要があるのです。
大川原正喜:難水溶性化合物であるジオスゲニンの生物学的利用能および組織移行性の改善を目的とした薬剤学的検討 城西大学大学院薬学研究科博士論文