鉄とフリーラジカル:鉄が嫌われる理由

鉄は、非常に重要なミネラルです。
30代・40代女性の半数以上は不足していないというデータもあり、必要量が約2倍になる妊婦の約8割が不足を感じているというデータも存在します。摂取基準と栄養摂取状況の調査結果を照らし合わせても、多くの女性で鉄が不足していることがわかります。

でも、なぜ、積極的に鉄は摂取されないのでしょうか?

その理由は、鉄イオンが原因のフリーラジカル(活性酸素)による害です。鉄剤の副作用として知られるのは、胸焼けや便秘などです。特に、鉄塩は、胃の時点で鉄イオン化してしまいますので、フリーラジカルの害が生じやすいです。

フェリチン鉄

その問題を解決した鉄として、カリフォルニア大学のエリザベス・タイル教授らによって開発された大豆フェリチン鉄なのです。鉄イオン化せずに、エンドサイトーシス(イメージ:右イラスト)という吸収機構で吸収されるため、フリーラジカルの害が生じない体に優しい鉄素材がフェリチン鉄なのです。

女性で貧血が多い理由

鉄の貯蔵庫

月経がある女性は、出血により鉄を失うため、男性以上に鉄が必要になってくることは、よく知られています。
一方、それ以外にも、女性で貧血が多い理由があるのです。それは、体の中で鉄を貯える機構と女性の特性に関係します。

鉄は、貯蔵鉄として、フェリチンというたんぱく質の中に蓄えられます。鉄が血中で不足すると、フェリチンの中に蓄えられた鉄を放出することで鉄が補われます。そして、実は、女性は男性に比べ、このフェリチンの量(すなわち蓄える容器の数)が少ないのです。そのため、女性は男性の約1.5倍の鉄を摂取し続けなければならないと言われています。

そもそも、女性は、鉄不足で貧血が起こりやすい体質でもあるのです。

女性は鉄を摂取する

吸収の良い非ヘム鉄:フェリチン鉄

現在、多くの方は「ヘム鉄は吸収が良い」「非ヘム鉄は吸収が悪い」という認識を持っていると思います。
その常識を覆したのがフェリチン鉄でもあります。

フェリチン鉄は、ヘム鉄と同様、生体に存在する生体鉄です。一方、ヘム鉄とは異なるため、非ヘム鉄に分類されます。

非ヘム鉄であるフェリチン鉄の吸収は良くないのでしょうか?

答え:悪くありません。

ヘム鉄と同じくらいの吸収が示されている報告が存在します。フェリチン鉄は、ヘム鉄と同様、生体鉄でもあるので、体が利用しやすいのだろうと考えられています。実際に、フェリチン鉄は、ヒトでの臨床試験も複数実施されており、優れた吸収性が示されています。そのため、ヘム鉄・非ヘム鉄のどちらにも分類されない第三の鉄素材として注目が高まりつつあるのです。

引用文献:
高後 裕, 大竹 孝明:「微量元素製剤の長期投与における問題点:鉄過剰」鉄代謝の生体に及ぼす影響 2015;49(2):59-65
Lönnerdal B, Bryant A, Liu X, Theil EC. Iron absorption from soybean ferritin in nonanemic women. Am J Clin Nutr. 2006;83(1):103-7.
Theil EC, Chen H, Miranda C, Janser H, Elsenhans B, Núñez MT, Pizarro F, Schümann K. Absorption of iron from ferritin is independent of heme iron and ferrous salts in women and rat intestinal segments. J Nutr. 2012;142(3):478-83.
Hoppler M, Schönbächler A, Meile L, Hurrell RF, Walczyk T., Ferritin-iron is released during boiling and in vitro gastric digestion. J Nutr. 2008;138(5):878-84.
増田太郎、川端浩鉄:代謝のキープレイヤー・フェリチンの鉄給源としての可能性についてフェリチン鉄は「第三」の栄養鉄形態か?化学と生物 55(8): 514-517 (2017)

大豆フェリチン鉄の原料製品が画期的な理由

フェリチン鉄には、1つ欠点があります。

それは、フェリチン(たんぱく質)は熱によって変性しやすいため、加熱してしまうと、分解してしまうという欠点です。

そのため、生の大豆にフェリチン鉄が含まれていても、通常、大豆は加熱して食されるため、フェリチン鉄は、分解してしまっているのです。大豆食品の摂取によって鉄の過剰摂取を注意する必要があると紹介される報告もありますが、実は、フェリチン鉄は含まれておらず、吸収の悪い鉄に代わっているので、それほど過剰摂取を気にする必要もないのです。

鉄の比較図

そういった熱に弱いフェリチン鉄の特性上、分離抽出も熱をかけずに行う必要があるため、その原料製品が非常に難しかったという問題がありました。加えて、定量分析方法も確立していなかったため、その含有量の管理が難しかったという背景がありました。

そして、定量分析方法を確立し、製造方法を開発したのがカリフォルニア大学バークレー校のエリザベス・タイル教授らのチームです(特許第5896543号、WO2013102054A1 フェリチンの単離、使用、および分析の方法)。現在、その画期的な発明は、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国で特許が取得されています。

Hoppler M, Schönbächler A, Meile L, Hurrell RF, Walczyk T., Ferritin-iron is released during boiling and in vitro gastric digestion. J Nutr. 2008 May;138(5):878-84.

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