乳酸菌ブースターで免疫強化
ジオスゲニンは、山芋由来の安全なステロイド系サポゲニンです。その摂取により、DHEAなどの性ホルモンの産生が増えることなどが報告されています。また、筋力・骨格の増強などのステロイド成分らしい働きも報告されています。さらに、近年は、富山大学で認知機能の改善効果が示され、機能性表示食品の申請も行われている。
それら性ホルモン前駆体やステロイドとしての働き以外の新たなチカラとして、近年、一部の乳酸菌を増やす(;プレバイオティクス効果)も報告されています。
ネズミのジオスゲニンの摂取によって、Lactobacillus murinusとLactobacillus reuteri(ロイテリ菌)というラクトバチルス属の乳酸菌で顕著な増殖が確認されています。このLactobacillus murinusとLactobacillus reuteriは、免疫活性が確認されており、これら乳酸菌の選択的な増殖によって、炎症抑制性T細胞の分化誘導の可能性についても述べられれています。
Huang CH, Cheng JY, Deng MC, Chou CH, Jan TR. Prebiotic effect of diosgenin, an immunoactive steroidal sapogenin of the Chinese yam. Food Chem. 2012;132(1):428-32. Pbumed ID: 26434311
この報告の延長で、食物アレルギー抑制に対する効果も示されています。ジオスゲニンは、直接的な抗炎症効果も確認されており、こういった間接的な抗炎症効果と合わせて、様々な機能性が期待できるのです。
植物由来のサポゲニン,ジオスゲニンが食物アレルギーを有するマウスの腸における制御性T細胞免疫を増進させる,
J Nat Prod 2010; 73(6):1033-1037
ジオスゲニンの経口投与は食物アレルギーのマウスモデルにおける腸Tヘルパー1様調節性T細胞の誘導を増強する,
Int Immunopharmacol. 2017;42:59-66.
乳酸菌の中には、菌が生きたまま安定しないなど、サプリメントなどに加工しにくいものも多く存在します。一方、こういった増殖(ブースター)効果がある成分を用いれば、特異的に一定の有用乳酸菌だけを腸内で増やすことが可能になります。
ジオスゲニンと筋肉
ボルトの強さの秘密はジオスゲニン!
近年のジオスゲニンへの注目は、陸上の金メダリストであるウサイン・ボルト選手がメダルを獲った際、ボトル選手の父親が「(強さの秘密は)間違いなくトレローニーのヤム芋だ!」とコメントしたことから始まります。
ボルト選手の出身国であるジャマイカでヤム芋が主食であることはよく知られています。特に、ボルト選手の出身地であるトレローニー地域は、よくヤム芋を食べる地域であることが知られています。
そして、ヤム芋(山芋の1つ)には、ジオスゲニンが配糖体(前駆体)として含まれます。我々の文献調査において、そのジオスゲニン配糖体は、採取されるエリアや品種によって異なることがわかっており、ボルト選手が摂取していたであろうアフリカ原産の山芋にもジオスゲニン配糖体が多く含まれていることがわかっています。
このジオスゲニンならびにジオスゲニン配糖体を含む山芋類(トゲドコロなど)は、動物試験で筋肉ステロイド産生増加や骨格への影響など、ストロイド系サポゲニン特有の機能性が報告されています。近年では、ヒト臨床により、レジスタンス運動とジオスゲニン配糖体を含んだ山芋を併用摂取することで、性ホルモンが通常のトレーニングよりもさらに増大し、筋量や筋力の増加を効果的に引き起こすという報告がなされています。ボルト選手の強さの秘密も、科学的に解明されつつあるのです。
また、近年は、プロテインやHMBサプリに利用されることも増えております。
実際、弊社原料を用いたアマチュアアスリートによるモニター試験でも、筋力アップや筋疲労の低減が示されています。今後、さらなる検証が求められると共に、アスリート向けニーズが期待されます。
参考文献
Vendl O, Wawrosch C, Noe C, Molina C, Kahl G, Kopp B. Diosgenin contents and DNA fingerprint screening of various yam (Dioscorea sp.) genotypes. Z Naturforsch C. 2006;61(11-12):847-55.
アスリートのトゲドコロ摂取がレジスタンストレーニングによる筋量・筋力に及ぼす影響, 日本スポーツ栄養研究誌 2018 11: 120
Acute administration of diosgenin or dioscorea improves hyperglycemia with increases muscular steroidogenesis in STZ-induced type 1 diabetic rats. J Steroid Biochem Mol Biol 2014; 143:152-159
Effect of diosgenin, a steroidal sapogenin, on the rat skeletal system. Acta Biochim Pol. 2016;63(2):287-95.
現在、こういったプレバイオティクス効果以外にも、ジオスゲニンの抗炎症効果(ED薬と同様なPDE5阻害作用)やオートファージ―関与なども報告され、新たな可能性が検証されています。